取り戻した誇り、切り開いた歴史~陸上競技男子4✖100mR~

「日本人は短距離走では黒人には勝てない」

それが世界の常識でした。
2016年8月20日、その常識は完全に崩壊しました。

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陸上競技男子4×100mR 日本銀メダル獲得!!!

今回の陸上競技男子4×100mR決勝のメンツは
バトンミスで予選失格によくなる米国や英国も
決勝に残っており、役者がそろった状態でのレースとなりました。

北京五輪で同種目で銅メダルを取ったときは、
アメリカをはじめとする強豪国がことごとく
予選落ちし、運を味方につけたメダルだった印象でした。

しかし今回に関しては完全に実力でもぎ取った
衝撃的な銀メダルでした!!

ちなみに北京、ロンドン五輪でも銀メダル相当の
記録(いずれも金はボルトを要するジャマイカ)で、
シドニー、アテネ五輪に関してはアメリカやイギリスを
上回る記録での金メダルです!

つまり、近年の五輪で日本よりも
速く走ったチームはジャマイカだけとなります。。。

また、昨年中国に奪われた
アジア記録を予選で37秒68、
決勝で37秒60まで伸ばして、
再び日本に取り戻した「誇りある走り」でした。

個人的にはこれからアジアの短距離走は中国の時代となり、
離される一方の展開になると考えていたので本当にいい意味で
予想を裏切ってくれて本当に感動が収まりません!

リオ五輪最大のサプライズともいえる
今回の結果の裏には過去の偉大な選手たち、
裏方のコーチ陣にまつわるドラマがありました。

お家芸の始まり

今でこそ世界大会決勝常連で日本のお家芸ともいわれる
リレーですが、かつては日本人がリレーでメダルを取るなど
全く想像もつかないものでした。

そもそもリレー種目への派遣もままならなかった
状態でした。

そんな中1988年ソウルオリンピックを迎えるにあたって
当時日本陸上競技連盟会長だった青木半治氏が、
「どんなに弱くても、リレーはオリンピックに派遣すべきだ。
リレーは基本なのだから」と述べ、オリンピックに
選手を派遣したことが、その後の日本リレーの
レベルを向上させたといわれています。

その時のタイムは38秒90、

準決勝敗退でしたが、

その次のバルセロナ五輪では

38秒77で6位入賞

続くアトランタ五輪は

予選で失格でした。 

アンダーハンドパス誕生

皆さんはリレーのバトンパス

というとどんな風に行いますか?

大抵の人は手を後ろにあげてもらい、
手を伸ばして渡すことをイメージ
されたのではないでしょうか。

これを「オーバーハンドパス」と言います。

オーバーハンドパス

テレビを見てお気づき方も多いと思いますが、
日本のバトンパスは、 もらう手は下、渡す側も下に突き刺すように
バトンを渡すので、全く他の国とやり方が異なります。

この渡し方を「アンダーハンドパス」と

いいます。
対比

多くの国は前後の走者が腕を水平に振り上げ、双方の走者の走る距離が最短になるようにバトンを受け渡すオーバーハンドパスを採用している。これはあまり技術が必要無いものであるが、反面バトンを受け取る走者が関節を真後ろに捻じ曲げる無理な体勢で受け取るため、バトンを落とす危険性も高い。一方日本フランスは伝統的にアンダーハンドパスを採用している。こちらは走るフォームを崩さないよう腰ほどの高さでバトンを受け渡す方法だが、技術的に難しく形だけを完成させるにも相当な熟練を要する。また低い位置でバトンを受け渡す体勢の関係上、オーバーハンドパスよりも前後の走者が接近する必要があり、距離的な面ではオーバーハンドパスに比べて不利ではあるが、息の合った者同士がタイミングを損なわずに行えば、減速を最小限まで抑えることができるという大きなメリットがある。このため、他国より個人の体格や走力が劣る日本でも、本競技では国際大会でしばしば上位入賞を果たしている。

Wikipediaより引用

以上のように個の力では外国人に太刀打ちできなかった理由から
アンダーハンドパスを日本は採用しています。

歴代の日本チームが工夫に工夫を重ねた結果、
世界一ともいわれるバトンワークができあがりました。

高すぎる世界の壁

世界大会決勝の常連となった日本ですが、
あと一歩のところでメダルに届きませんでした。

バトン技術に関しては日本に分があっても、
外国人選手のバトンワークを補って有り余る「個」の力の壁が立ちふさがりました。

伊東浩司選手、朝原宣治選手、末續慎吾選手といった
名だたる世界と戦えるエースがいてももう一枚が噛み合わない。

そんな歯がゆい展開が続きました。

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日の丸を背負って戦ってきた歴代日本代表の想いが次の世代、
さらにその次の世代へと継承されて今の日本リレーがあるのです。

執念の銅メダル

そんな日本チームの悲願が達成されたのが2008年北京五輪でした。

塚原直貴選手、末續慎吾選手、高平慎二選手、朝原宣治選手で
繋いだバトンは見事に銅メダルを獲得しました!!

長年日本リレーを引っ張り続けた朝原選手の弾けた表情が
どれだけの想いを繋いできたかを物語っていました!

興奮しすぎて朝原選手が放り投げたバトンが行方不明になったのは
陸上好きの間では有名なお茶目なエピソードになりました(笑)

中国の台頭

その後、日本短距離走は個人レベルでも若手の活躍が目立つようになりました。

飯塚翔太選手の世界ジュニア金メダル、
桐生祥秀選手のユース世界最高記録、
サニブラウン選手のユース二冠  

等々

明るい材料が揃い始めました。

ですが、それに比例することなく
100mや200mのリレーの日本記録は中々更新されず、
リレーの成績も北京五輪以降はあまり良いものではありませんでした。

そんな日本が足踏みをしている間に中国の大躍進が目立つようになりました。

黄色人種初の100m9秒台、リレー37秒台を
立て続けに出されてしまいます。

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1999年に伊東浩司が10秒00を出して以来、
日本人の悲願であった9秒台を中国に持っていかれてしまったのにくわえ、

お家芸であるリレーで完敗してしまったのは、
誇りまで砕かれる本当に悔しい出来事でした。

限界突破、さらなる高みへ

今回のロンドン五輪のリレーチームは
中学生、もしくは高校生のときに北京での銅メダルをみて憧れた世代です。

前評判も「史上最強」の呼び声高く、
もしかしたらという期待がされていました。

第一走者の山縣亮太選手は
広島県出身で名門修道高校から慶應義塾大学へと進学した
秀才アスリートです。

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高校時代から目覚ましい活躍を見せており、
大学生のときに臨んだ前回ロンドン五輪では、

五輪での日本人最高記録をマークした
強心臓を持つ選手です。

今回も日本人最高記録を更に塗り替え絶好調でした。

第二走者の飯塚翔太選手は
静岡出身で185cmの大型アスリート。

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中1から日本一を取り続けており、
同い年の私達の常に先頭を走り続ける スター選手です。

しかし、必ずしも順風満帆ではなく、
中学二年から高校生の間は オスグットやケガに悩まされ続けた
苦労人でもあります。

前述した通り大学一年生の時に一気に覚醒し、
200mで世界ジュニア金メダルを獲得し、「和製ボルト」と呼ばれ、
飯塚選手を筆頭とする同年代はプラチナ世代と呼ばれました!

その後も成長を続け、今年の日本選手権では200mでは
日本歴代2位の記録を叩き出しました!

また、100m専門の選手ではありませんが、
リレーでの爆発力には定評があり、 

大学時代はリレーでナショナルチーム並の
学生記録を中央大学単独チームで叩きだし、
その時の飯塚選手の爆発力は圧倒的なものでした!!

同い年のスターなので力の入った紹介をしてしまいました(笑)

第三走者は桐生祥秀選手。

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日本人で唯一追い風参考ながら
9秒87という9秒台の記録をマークし、期待され続けるのが宿命の選手です。

洛南高校2年生の時に高校記録を一気に更新したのを皮切りに、
高校3年では10秒01というとんでもない記録を叩きだしています!

30m辺りからの加速力は日本人離れしており、
いつ9秒台が出ても不思議では ありません。

今も残る伝説の400mR 39秒64の桐生選手のもつ高校記録を出したときのレースを

私は生で見たのですが、周りの選手が止まって見えるほど
圧倒的な加速力で驚愕しっぱなしでした。

今回のリオ五輪では個人種目では振るわなかった桐生選手ですが、 
リレーでは予選から黒人選手以上の加速力を見せつけ、
やはりものが違うと改めて思い知らされました。

第四走者はケンブリッジ飛鳥選手。

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ジャマイカ人の父と日本人の母を持つハーフの選手です。

やはりジャマイカの血を引いているということもあり
高校時代から注目を浴びていました。

ただインターハイで決勝に残るレベルではありましたが、
優勝候補筆頭と目される選手ではありませんでした。

元々は200mを得意にしていましたが、昨年辺りからの覚醒の兆しが見え始め、
今季に入り一気にブレイク!

山縣、桐生両選手を破って今年の日本選手権を制し見事代表の座を射止めました!

遅咲きの選手である可能性が高いので、
東京五輪までに100mで9秒8台の記録を出していても全く不思議ではない恐るべきアスリートです。

史上最強の前評判通りに予選は驚異的なアジア新、
全体の2位で突破しました!

この予選の記録は今まで日本人が抱え続けてきたあと一歩が足りないというもやもやを
一気に払い除けるものでした!

なんとアメリカやジャマイカのいる北米、カリブ海を除けば
今回の日本の記録より速く走った国が存在しないのです!

アジア人が世界で通用することを証明した瞬間でした。

 

そして迎えた決勝。

現時点で世界最強の役者が揃っていました。

日本全体の期待、過去の偉大な
日本人スプリンター達の無念、

その他個々の抱える様々な色んな感情が錯綜するスタート前でした。

号砲。

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スタートの切れ味は世界最高レベルといわれる山縣選手が
よりキレを増したスタート切ります!

ほぼトップの位置で飯塚選手へ。

世界のエース級が揃う区間で互角以上の走り!

そして今や一番重要な区間とも言われている第三者桐生選手へ!

驚異的な爆発力で後続を引き離し、トップのジャマイカに
ほぼ並ぶ圧倒的な走り!

なぜ個人レースでそれをやらない!(笑)

そして最高ポジションでアンカー、ケンブリッジ飛鳥選手へ! 

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やはりボルトは圧倒的に速い!

ケンブリッジ選手はアメリカとの競り合い!
後ろからはカナダの猛追!

しかし、ケンブリッジ選手の恐るべき粘り!

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ラスト10m!アメリカをややリード!

カナダが速い!

そしてフィニッシュ!!!

その時歴史が動きました。

かつて世界最強の名声を欲しいままにし、
今回も伝説のスプリンター

ジャスティン・ガトリン

タイソン・ゲイを擁する

あのアメリカに日本が勝利する歴史的瞬間に 
私達は立ち会えたのです。

記録は予選の記録を上回る

37秒60!

 

決勝の記録が予選の記録を
上回ること自体がかなり久しぶりだったようです!

ずっと日本に足りないとされていた「個」の力が揃い始め、
それに世界最高の「技術」が加わった時、
「個」ではまだ遠く及ばないアメリカに勝つことできることを証明してくれました。

世界で運ではなく、実力で勝負できるということが証明されたことで、
一気に個人の力が突き抜ける時代が日本に訪れる気がします。

9秒台が当たり前の時代が来るでしょう。

歴史を切り開いてくれた今回のメンバーには
本当に感謝しなければなりませんね!

そして東京五輪まであと4年もあります。

さらに個の力を高めることが出来たら、
あのジャマイカを倒して日本人が短距離種目で
表彰台の頂点に立つ瞬間を目撃出来るかもしれませんね!

今後の日本短距離界に大注目です!!

ゴールドメダル.jp

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